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大容量 RAID ストレージ ホワイトペーパー

 

2008/12/24

icon大容量 RAID ストレージ
icon1. 大容量ストレージの定義
icon2. 大容量 RAID ストレージに期待されること
  1) 性能
  2) 拡張性
  3) 安全性
  4) 冷却システム
  5) 電源効率
  6) 省エネルギーモードサポート
  7)高可用性
  8)バックアップ
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大容量 RAID ストレージ

今日、ハードディスクは市販されているもので最大容量が1.5 TB です。今後数年間でこのドライブ容量は更に3から4倍程度増大することが予想されています。しかし、一方で非構造化データ、デジタルコンテンツデータ等の増加予想はそれを上回る勢いで増加することが予想されています。そこで、IT マネージャーは急激に増大するデータを保存するストレージの準備をする必要があります。そして、選択の為の要件を考えなくてはなりません。
例えば、以下の様なストレージ製品に対する要件が必要でしょう。

1. 大容量データを収納可能なこと
2. データの出し入れができるだけ高速に行えること
3. ストレージとして拡張性があること
4. 勿論、高信頼であること
5. 24/7 のオペレーションに対応できること
5. IDC ラック内でスペースが小さいこと
6. 消費電力が小さいこと
7. 廃熱が小さいこと
8. MAID 等の省エネルギーモードをサポートすること
9. バックアップが採り易いこと

以下、それぞれの要件にふれながら現在の大容量 RAID ストレージ製品の状況をご説明いたします。

1. 大容量ストレージの定義

大容量ストレージという場合、まず数十テラバイトのストレージが頭に浮かびます。現在、漸く Windows, Mac や Linux で GPT フォーマットの論理ボリュームがサポートされるようになったため、2 TB の壁を超えた大容量ボリュームを自分のコンピュータにマウントすることができるようになり、この「大容量」という言葉が現実的になってきました。無論、この「大容量」を支えるものとしてインテリジェントなコントローラを搭載した RAID 装置が必要です。容量が大きければ大きい程、完全な機能を備えたストレージが要求されることはいうまでもありません。ファイルを書き込んだり、読み出したりする性能、大量のデータを安心して収納できる信頼性、できるだけ場所や、エネルギーを消費しない機能等必要な要件が沢山あります。

また、通常の RAID 装置の場合、19インチラック2U サイズに12ドライブ、3U に16ドライブ、または、4U に24ドライブが通常で、19インチ・ラックスペース1U 当たり 6HDD, 6TB が最大の収納容量になります。一方、大容量 RAIDストレージと呼ばれる製品は Nexsan社の SATABeast の様に4U で42ドライブ、 1U当たりの実装密度で10.5台、また、Xyratex社の F5404E の様に4U で48ドライブ、12 HDD/1U の実装密度になり、通常の RAID 製品より1. 7倍から2倍のドライブ実装を可能とし、数十テラバイトのボリューム容量を可能とするストレージです。ラックスペースは IDC センターを使用される場合、切実な問題です。何故なら、通常大都市での19”ラックのコストは月額50万円は下りませんから、1U 当たりのコストは月額1万円以上になります。

2. 大容量 RAID ストレージに期待されること

大容量 RAID ストレージと言えば、先に掲げた課題総てを何らかの技術で解決される必要があります。以下、それぞれのテーマでご説明します。

1) 性能
大容量 RAID ストレージに関して、大きなボリュームの作成を可能にすることは勿論ですが、多量で、場合によっては数百ギガバイトを超える大容量のデータの出し入れの性能も容量に比例して高くなくてはなりません。例えば弊社が取り扱うXyratex社の F5404E は以下の性能を持っています。
シーケンシャルデータの読込み: 820MB/sec
シーケンシャルデータの書込み: 680MB/sec
ランダムの読込み: 575MB/sec
ランダムの書込み: 140MB/sec
1秒間で読み書き回数: 最大約7万回
(2つのコントローラに個別に LUを割当、IO をさせた場合の合計レート)

数十テラバイトのストレージへ少ないストレスで大容量データ読み書きをするにはこの程度の性能を持っていることを期待されます。 

2) 拡張性
大容量ストレージの話題には常にRAID 装置の様なブロックストレージディバイスとファイルサーバの様なファイルストレージディバイスが比較されます。この話題は先の楽しみに置いておいて、 今回はブロックディバイスである RAID コントローラを搭載した大容量 RAID ストレージ装置に限定してお話を進めます。 
非構造化データは今後3年間で現在の6倍程度の増加が予想されています。この急激な増加に対し大容量RAID ストレージで対策を行う必要がありますが、3年先までのデータに対して初めから対策を行なうより必要に応じてストレージ容量を追加できる方が負担が初期費用と投資負担に関し合理的と言えます。

大容量 RAID ストレージという意味では、データの増大スピードは通常のデータベースのような構造化データより急速なはずです。その為、必要に応じ容量を増やす事が求められます。
例えば、F5404E ですと、最低3台のRAID-5 のアレーを構成する事から始め、48ドライブを超える場合には、拡張筐体を1台追加して、最大96台のドライブまで必要に応じて容量を拡張することができます。また、その間データを退避したりする必要もありません。この様に、大容量 RAID ストレージは必要に応じてデータ保存のスペースを拡張することができることが求められます。

3) 安全性
まず、大容量 RAID ストレージと通常のストレージではドライブの実装密度に差があると定義しましたが、通常のストレージではドライブとドライブの間隔が最少でも 5mm 程度確保されていますが、4U の大容量RAID ストレージの場合、ドライブ間の隙間はその約半分になります。そのため、個々のドライブの回転、ヘッドのアクセスの振動が隣のドライブに伝わらないようにする必要があります。例えば、Xyratex社が開発した F5404E の場合、独自のドライブマネージメントシステムで個々のドライブ振動を吸収するメカニズムを採用し、システム全体の信頼性を確保しています。この様に、大容量 RAID ストレージにはそれなりに高密度ドライブ実装を保障する技術が要求されます。この技術は一朝にはできるものではなく、経験と実績に基づく技術的な背景が必要になります。
大容量 RAID ストレージの信頼性は言うまでもありませんが、数十テラバイトのデータにを安全に保存し、データロスのリスクを最小限にすることです。その為、高い冗長性が求められます。コントローラを含む総ての部品は冗長化され、データのパスも冗長化されていることが求められます。また、通常、大容量RAID ストレージと呼ばれる RAID 装置には RAID−6 の機能が標準で装備されています。RAID-5 の場合1つのアレイ内で同時に二つのドライブに障害が発生し、データが消失する確立は十万分の1程度ですが、RAID-6 の場合1千万分の1の確立程度まで向上します。この高い安全性が大容量のデータを預けることができるストレージとしての必須の要件といえます。

4) 冷却システム
高密度にドライブを実装するF5404E の様なストレージに関して、まず心配されるのは装置内部の廃熱性能の問題です。F5404E の場合、通常のストレージ 1U 当りのドライブ実装密度に比較して倍のドライブを搭載しているため、効率的な冷却システムがデザインされています。3基の冷却ファンシステムが電源ユニット内部に装着され、それぞれの冷却システムには二重化されたDCファンが装備されています。弊社でのテストでは三基の内一基のファンシステムを停止させ、1時間経過後に筐体内で最も風流の少ない部分にあるドライブの表面温度が55℃程度であったことを確認しています。この温度はメーカの限界とされる80℃からはなお25℃低い温度で、ドライブの寿命に影響を与える可能性はありません。
また、実装されている冷却ファンには回転数が温度追従型の低騒音ファンが採用されており、F5404Eの背面部分で約75dbの騒音に留まりました。 

5) 電源効率
大容量のストレージには安定して稼動する為に大容量の電源が必要とされます。しかし、近年データセンターでのエネルギー消費の削減が課題とされています。 AC-DC の変換効率の高い電源を使用したり、DC-DC の電源ユニットを使用し、変換ロスの少ない電源ユニットを使用することが求められます。
また、電源ユニットの障害が発生した場合でも、ストレージとして安定して稼動する必要があります。例えば、F5404E では、”N+1” 電源ユニットのデザインで、450W 電源モニュールを三基使用することで、1台の電源ユニットに障害が発生した場合でも、他の2つのユニットからの電力供給で、安定して稼動を継続することができます。

6) 省エネルギーモードサポート
前項で電源ユニットの変換効率のことを述べましたが、地球温暖化対策として CO2 の削減が求められています。その為、データセンターに於けるエネルギー消費量の削減も確実に行う必要があります。現在、ストレージ技術として MAID (Massive Array Inactive Device) と呼ばれる省エネルギー技術が確立されています。一般的にこの技術は SCSI のコマンドを利用して、一定期間アクセスのないドライブの回転を停止し、電力の消費を削減することですが、ストレージ製品ベンダー毎に個別に MAID 技術が異なっています。例えば F5404E では搭載されている最大96台のドライブの中から任意のドライブを選定して停止状態に指定することができます。更に、アクセスされる Array 単位にドライブ回転の停止、起動がポリシーベースで指定できます。他の場合は各ドライブ単位での回転停止、起動を行います。また、定期的に回転停止中のドライブをチェックの為に回転を起動したり、停止中のドライブがホストからのアクセスに対応して迅速に起動することができるかをパトロールしています。

7)高可用性
24/7 のオペレーションに対応可能とする為に WIndows の MPIO, Mac OS X の Multi-Pathing, Linux の Device Mapper 等のストレージに対する High-Availability フィーチャーをサポートする様になってきました。大容量 RAID ストレージもニアラインストレージとして、エンタープライズ仕様の高可用性に対応する必要があります。
F5404Eに付属するストレージマネージメントユーザーインタフェースの StoreView により、
Windows, Mac OS X, Linux へのHA構成を簡単に設定する事が可能です。
通常、Multi-pathing の場合、
Path Failover までの時間は最大で10秒程度とOS 上で設定されています。多くの大容量 RAID 装置に付加されているドライブの回転停止をサポートする MAID (Massive Array Inactive Drive) 機能はこのタイムアウトの時間内にホストからのコマンドに対して返答することができず、タイムアウト値と長い物に変更するか、Multi-pathing の機能を使用しないことが通常です。
F5404Eはドライブの回転停止/起動という省エネ機能をサポートしたまま、同時に Multi-Pathing をサポートするという、エンタープライズ仕様に対応した大容量RAIDストレージです。

8)バックアップ
大容量RAIDストレージには常にバックアップが課題になります。フルバックアップ、差分バックアップという従来型のバックアップ手法は夜間、週末の限られたタイムウインドウの中で処理することが難しくなっています。
そこで、Snapshot 機能を使用して、インタイムでのバックアップを採ることが必要になります。
例えば、F5404E ではビルドインのハードウエアー Snapshot 機能があります。Microsoft Windows Virtual Storage Service (VSS) のサポート対象ハードウエアーとしてWindows 2003 server、2008 server によってハードウエアープロバイダーとして認識され、F5404E 内部に保存されたSnapshot データをバックアップアプリケーションによって保存することができます。この方法により、バックアップの為の時間を設ける事なくストレージのバックアップを取る事ができ、システムの可用性を更に向上させる事が可能になります。例えば、ある時点のストレージのデータイメージをSnapshotデータとして保存することができます。この Snapshot データを元に Snapback で直前のストレージの状態に戻ることができ、Windows VSS をサポートするバックアップツールを使用してSnapshotデータのバックアップを採ることができます。
大容量 RAID ストレージをバックアップタイムウインドウを気にする事なくバックアップを採る事が可能なデータセキュリティー機能は大容量ストレージを検討するうえで重要なポイントと言えます。

以上、大容量 RAID ストレージ製品における製品要件についてご案内致しました。他にも多様な技術は存在していますが、最大のポイントは製品のフィールドでの実績です。昨年から今年にかけてコンテンツのデジタル化に伴い幾つかの大容量 RAID 製品が紹介されました。しかし、最大の選択のポイントはそのストレージのドライブマネージメントの技術や、コントローラファームウエアーの信頼性、更には、ストレージの管理のし易さなどが無形の評価ポイントとして考慮される必要があるでしょう。

【関連リンク】
【製品紹介】高密度 大容量RAID ストレージ XRS F5404E 

 

 

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