2009.06.11
はじめに
これまでネットワーク越しにディスク資源を共有する手段はOS 毎にいろいろな方法が開発されてきました。
NFS、SMB の様に本来は特定のOS 固有の共有であったものが、他のOS でもこれを利用することが出来る
ように拡張された結果、相互接続の手段として広く利用されているものもあります。
Tiger Technology 社が提供する metaLAN は広義でとらえた場合、これらのネットワーク越し共有の手段の
一つとも言えます。同時にmetaLAN は同社のSAN ミドルウェアであるmetaSAN との連携を前提に考えられ
ている為、ネットワークの経路を利用したSAN 環境を提供するものでもあり、帯域の管理機能が含まれてい
るなど一般的な共有環境とは異なる方向性を持っていると見ることもできます。
システム構築に携わった経験をお持ちの方であればお判りのように、世の中に存在し得る全てのシステム要
求に常に最善のソリューションとなり得る環境はありません。それぞれの得失を正しく把握し、何が必要かを
判断する必要があります。以下ではWindows がデフォルトで持っている共有機能であるCIFS とmetaLAN
の得失について説明いたします。
(以下に示す事例は全ての構築し得る環境で常に同一結果であることを保証するものではありません)クライアント数に起因する得失
システム構築の際、事前に小さい模擬システムを作り妥当性の確認を行うことが良くありますが、ネットワーク越しの共有を行う場合に重要であり、落とし穴になりがちな注意点としてクライアント数によるパフォーマンスの変動があります。
Ethernet は規格が100Mbps, 1000Mbps となっていても実際に有効に使える帯域はおおむね半分程度で考えるのが妥当です。一般的な社内LAN などではクライアントの負荷が時間的に分散するため、長い時間軸で考えると、1経路の実用帯域*クライアント数が供給されているようにも見えます。しかし実際には複数のクライアントが同時に負荷をかける(数人が同時にインターネット経由で大きなファイルのダウンロードをする様なケース)場合に非常に遅くなる事を経験されている方は少なくないはずです。
実業務でこの状態が発生するとアプリケーション側のタイムアウトなどの原因となります。一定時間内に一定量のデータが読書きできることが必須となる映像ストリーミングでは、再生が止まったり、記録したはずのデータが部分的に飛んでいると言った障害の原因となります。
TCP/IP 等についてのネットワーク概論に関する説明は割愛させていただきます。インターネットで多くの有用な情報が提供されていますので、そちらをご参照ください。インターネット上には数多くの情報があふれていますが、ここで述べているネットワーク共有の動作とクライアント数による影響については意外と情報が提供されていません。
これには環境の定義と結果の評価がシステムにより千差万別であり、単純なベンチマークのように結果を得ることができない現実があります。以下の例では各クライアントで同一のベンチマーク(IO サイズ対スループット評価)を行い、クライアント数による変化に注目しています。
この例からは、クライアント数が1(○)若しくは2(△)台の場合、CIFS とmetaLAN の実用上の差はありません。ところが3(◇)、4(□)とクライアント数が増えてゆくとCIFS 共有の場合には大きな落ち込みが発生しています。単純に1台の1/N でも表せないため、システム構築時の「こんなはずではなかった」と言う落とし穴になりかねません。
対してmetaLAN(左側)の場合には効率の良い転送を行うため、クライアント数の増加にも関わらず、ほぼ等しい性能を維持できています。クライアント数による運用上の制限付加や予定外の動作障害の回避と言った効果が期待できます。【関連リンク】
・【製品紹介】SANのメリットをLANのクライアントで生かす metaLAN
・【導入事例】metaSAN/metaLAN 導入事例