SAN・ストレージマガジン
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~次世代放送ビジネスの鍵はアーカイブスにあり~
まとめレポート 2009年5月15日
先週13日より15日まで、東京ビッグサイトで第11回データストレージエキスポが開催された。日本放送協会ライツ・アーカイブスセンター長 菅野 栄氏による「2011年完全デジタル化に向けたNHKの取り組み」というテーマで次世代放送ビジネスのキーとしてのアーカイブスのあり方についての基調講演があり、朝10時30分からの開演というのに500人は収容できると思われる会場は開演10分前には人々で一杯だった。
菅野氏の講演はNHK番組の「あの人に会いたい』の松下幸之助、本田宗一郎、司馬遼太郎等のビデオ映像の一部紹介から始まった。
NHKアーカイブスの使命とは、フィルムからデジタルまでの貴重なコンテンツの活用、一般への広い公開、100年単位でのコンテンツ保存だ。NHKアーカイブスのコンテンツは毎日約1,000本が全国の局により放送番組のために利用され、昨年の利用本数は35万本にも及んだそうだ。また、インターネットでのアーカイブスサービスをNHKオンディマンドとして開始し、1740本のコンテンツを提供している。
NHKは1959年からフィルム、アナログビデオ、デジタルビデオとコンテンツを保存してきたが、今後年間2万4千時間のニュース/番組がアーカイブスとして保存され、2013年までにファイル化する対象のコンテンツは約56万時間に及ぶとの試算がされている。そこで、これら膨大なコンテンツをいかに保存するかということが大きな課題になってきている。アーカイブス本来の使命を果たす為に、数年単位ではない100年を超える長期保存(100年後の人々が現在の我々の生活を知ることができる。)と、高速に内容の読み書きができる (ニュースの場合、3年分のコンテンツ、番組の場合、5年分のコンテンツを再利用するケースが多い) ことが求められている。
NHKアーカイブスでは2011年までに70万本のビデオテープを保存することになり、これらのテープをファイル化することにより、スペース、および、コストを10分の1にすることを目指している。一方、ファイル化されたデータを保存するアーカイブシステムは、必要な時にいつでも高速に使用できること、読み書きの保障(メディアの寿命)は30年以上であること等、厳しい性能保障が要求される。特にシステムとしては、データのポータビリティーを保障するシステムである必要があると菅野氏は説明した。
また、NHKの事業目標の中には3スクリーンといって、TV、PC、 Mobileを視聴者とのインタフェースと捉え、コンテンツをこれらのメディアに提供して行くことが盛り込まれている。その為には完全デジタル化を達成し(カメラ媒体、アーカイブスまでがファイル化され、総ての作業がデジタル化すること)、ワークフローの効率化を図る必要があるということだ。また、視聴者ニーズの多様化、放送のデジタル化に対応する為に、デジタルアーカイブスを構築し、従来の「コンテンツの貯蔵庫」から「知財の提供源へ」の変身を図ることを目指している。
菅野氏はアーカイブは文化であり、後代に引き継ぐべきものであり、アーカイブスとして、信頼性、安定性が絶対必要であると講演を結んでいる。
今回の講演では海外事情として、米国のハリウッドの4Kデジタル映像での映画/TVに対する取り組み、スポーツ専門局のTV/Web同時配信、そして、大手キー局でのクラウドコンピューティングに関する取り組みが行われていることに若干触れている。4月には、英国においてBBCや、大学などが参加するアーカイビングプロジェクト「AVTAR-m」の始動が発表となった。弊社取扱いストレージメーカーであるXyratex社も参加するこのプロジェクトについて、簡単なリポートを用意しました。一度、ご参考までお目通し頂ければ幸です。
【リリース】超大容量デジタルアーカイブソリューションをNAB 09にて発表
http://www.micassoc.co.jp/micnews/09_05_12.html
【解説】イギリスでの大容量コンテンツアーカイブシステム構築プロジェクトに関して
http://www.micassoc.co.jp/techdocs/LScaleDigitalArchive_UK.html